#55 ピッチングデザイン
休業中の読書第2弾として「ピッチングデザイン」を読みました。
「セイバーメトリクスの落とし穴」の著者である「お股ニキ」さんが書いた本になります。
この本は「セイバーメトリクスの落とし穴」に書いてあることと内容が被る部分はありますが、より「ピッチング」に特化した内容になっています。
「セイバーメトリクスの落とし穴」と同様に目から鱗の情報がたくさんあり、これまでの常識が覆されるようなことも多々ありました。
「ピッチトンネル」について
なんとくTwitterなどのSNSで見かけていたこの言葉。この本を読むまではいったい何のことを言っていたのか全く分かりませんでした。
さて、この「ピッチトンネル」とは何のことかと言うと、ピッチャーのリリース位置からホームプレートまでの約7.2メートルの空間上にある、投手の投げたボールが通る仮想のトンネル(円)のことで、ボールが同じ場所に集まるほど小さくなります。
「ピッチトンネルが小さく、そこからボールが様々な方向へ変化していくほど打者はボールを見極めづらくなる」と言われています。
ただ、ピッチトンネルは絶対的なものではないため「なるべくトンネルを構成しつつ、打者の意表を突く」「トンネルを外れても変化量が上回れば良い」という単純な話もあります。
「エクステンション」とは?
これはこの本を読んで初めて知った言葉です。
「エクステンション」とはボールリリース時のピッチャープレートからリリース位置までの距離のことを指します。
「球持ちの良さ」「どれだけ打者寄り(前方)でボールをリリースできているか」の指標になります。
昔から「球持ちがよく、打者寄りでリリースできる」ほど、体感速度は上がり、実際のプロの一流投手の体感スピードが速く感じる投手は打者寄りのリリースが出来ています。
ただ、打者寄りでリリースするために無理に歩幅を広げようとしたり、腕を前に出そうとしたりすることでフォームが崩れたり、エクステンションが長くなりすぎてもボールの威力が低下してしまうため、身体のバランスを保ちながらなるべく前方でリリースできるような投球を目指した方が良いといえます。
効率よく力を伝えられれば結果としてエクステンションを広がりボールの威力や球速も上がるかと思われます。
「ミートポイントと打球の関係」
投球以外でも、こんなことが書かれていました。
メジャーの打者の平均的なミートポイントの傾向とホームラン、ライナー、ゴロとの関係性について以下のようになっています。
■ホームラン(フライ)…ホームベースの前よりも約22~45センチ前の範囲。特に約22~30センチ前が最も打球速度が速いようだ。
■ライナー…ホームベースの前のラインよりも7.5センチ前から、約22.5センチ
後ろまでの範囲。
■ゴロ…ホームベースの前のラインから約15~45センチ後ろの範囲
この統計を見ると「ボールはより前でとらえれば安打になりやすい」と言えます。
よく聞く言葉として「ボールをよく見て、ギリギリまで引き付けて打て」とか「メジャーリーガーはスイングが速いから引きつけて打っても飛ぶ」などがありますが、実際はホームランを打つときは前でとらえていますし、差し込まれた時にはゴロになりやすいとなっていますね。
あくまでも「意識」として「引きつけて打つ」ということですね。
データから導かれる現実
これまで紹介したもの以外にもたくさんのデータが本には載っています。
今まで当たり前に言われていたことの「なぜ(Why)?」を、蓄積されてきたデータを基に紐解いてくれたりと非常に納得できる内容でした。
かなりマニアックな内容でピッチャー寄りの内容ではありますが、トレーナーとしてはいろいろと選手と会話する時の話のネタとしては良い物ばかりでした。
「フロント・ドア」「バック・ドア」「バック・フット」などの使い方なんかもピッチングの幅を広げる上では大事になりますね。これはプロだから出来る!ではなく、アマチュアでも同様に使っていけばよりピッチングの幅は広がってきます。
僕はトレーナーなので技術的な部分の指導はあまりしませんが、身体の使い方の指導などはしていきます。その中でピッチトンネルの概念などは「意識」として持たせるのは非常に面白いと思いました。
僕自身もキャッチボールする時なんか意識してやってみたいと思います。
特にボールの回転なんか意識してみたいな。
以上